蘭丸の人を見抜く洞察力

信長が紀州より召し抱えた者が居た。

蘭丸は信長に言う。

「はばからず申しますが、その者、身分の者の割には言葉が上手すぎます。紀州の人間だから、伊賀にも近いことです。縁者を丸め込んで裏切るつもりでしょう。きっと身分あるものに言い含められた言葉を、自分の言葉に直さずにそのまま言っているのです。」

調べた結果は蘭丸の言葉通り。その者の裏切りは発覚し、罰せられた。

     *    *    *    *    *

信長が光秀を叩いた時、光秀は落涙して「ご恩莫大なる上様に、謀反など考えたこともございませんのに・・」と言った。

側にいた蘭丸は「上様は親しみの余りに叩かれたのです。うらやましいことです。」と取り繕ったが、

後で信長に「謀反を考えたことがない、というのは謀反心ある証拠です。」と告げた。

またある時、光秀は食事の際、口の中にある飯もかまずに何やらじっと思案し、自分で手に持っていた箸を落とした事にもしばらく気づかない様子だった。

蘭丸は光秀が謀反を企んでいるに違いないと思い、信長に進言した。

しかし信長は取り合わなかった。


森蘭丸の生涯

森欄丸(もり らんまる)は、永禄8(1565)年、尾張国葉栗郡蓮台の丑年生まれ。美濃の豪族で織田信長の家臣・森可成(もり よしなり)の三男である。森氏は源義隆を祖とする。 実名(諱)は「森成利」で、現在では「森蘭丸」と記されることが多いが、実際に使っていた名前は「森乱丸」である可能性が高い。