澤田ふじ子の小説に描かれている蘭丸の女性関係

※澤田ふじ子著「森蘭丸」(光文社文庫)より


蘭丸は侍女(貴人のそばに仕える女性)の八重に情愛を覚えるものの、身分の低い田舎娘に心を奪われることを自ら戒め、公家の娘である湯布姫に心を寄せていく。

しかし、侍女・八重の蘭丸に対する一途な思いは続く。

「蘭丸さま、おさらばでございまする。」 

八重は、かつて自分を求めた蘭丸の心変わりに絶望し、入水自殺を図るが未遂に終わる。

湯布姫は乱丸との婚姻を望み、湯布姫の父も、当時信長の側近で経済官僚であった将来有望な若者と縁を結ぶことを奨励する。

しかし、蘭丸の死後、湯布姫の父は明智光秀に咎められるのを恐れて、森家と過去に関わった痕跡を消そうと必死になる。

八重と湯布姫は、戦乱の世で叶わぬ恋の苦境にあえいだ女性たちであった。

森蘭丸の生涯

森欄丸(もり らんまる)は、永禄8(1565)年、尾張国葉栗郡蓮台の丑年生まれ。美濃の豪族で織田信長の家臣・森可成(もり よしなり)の三男である。森氏は源義隆を祖とする。 実名(諱)は「森成利」で、現在では「森蘭丸」と記されることが多いが、実際に使っていた名前は「森乱丸」である可能性が高い。