信長は、自分には三つの宝があると自賛した。
一つめは、奥州から献じた白斑の鷹。世にも希な逸物である。
二つ目は、青の馬。どんな砂浜や石ころの上を駆けても、つまずく事がない。
三つめは、御小姓の森乱丸。これは忠功世に知るところである。
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信長は家臣たちに鍔(つば)に菊をあしらった刀を見せ、その菊の数を当てた者に刀を与えると言った。
皆が答える中、乱丸だけは黙ったままであった。
信長がその理由を尋ねると、信長が用を足す間、刀を持って待っている時に、数を数えて知っているからだと言った。
その正直さに感心した信長は、その刀を乱丸に与えた。
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