主従を超えた関係1 信長からの寵愛

信長は、自分には三つの宝があると自賛した。

一つめは、奥州から献じた白斑の鷹。世にも希な逸物である。

二つ目は、青の馬。どんな砂浜や石ころの上を駆けても、つまずく事がない。

三つめは、御小姓の森乱丸。これは忠功世に知るところである。

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信長は家臣たちに鍔(つば)に菊をあしらった刀を見せ、その菊の数を当てた者に刀を与えると言った。

皆が答える中、乱丸だけは黙ったままであった。

信長がその理由を尋ねると、信長が用を足す間、刀を持って待っている時に、数を数えて知っているからだと言った。

その正直さに感心した信長は、その刀を乱丸に与えた。


森蘭丸の生涯

森欄丸(もり らんまる)は、永禄8(1565)年、尾張国葉栗郡蓮台の丑年生まれ。美濃の豪族で織田信長の家臣・森可成(もり よしなり)の三男である。森氏は源義隆を祖とする。 実名(諱)は「森成利」で、現在では「森蘭丸」と記されることが多いが、実際に使っていた名前は「森乱丸」である可能性が高い。